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【 カンボジアだより 】

はじめまして。
今回インターンとして東京事務所でお手伝いをさせていただきます、深川久美子です。
どうぞよろしくお願い致します。

 

日本では「国際養子縁組」(国籍の異なる養親と養子の間で行われる養子縁組)という言葉はあまり聞き慣れないかもしれませんが、米国務省領事局によると、米国では2009年度だけで、公的な児童福祉施設を介した国内養子縁組が5万7466件、また、国際養子縁組は1万2744件も行われたそうです。 (ちなみに、同年度の国際養子縁組の子どもの出身国は多い順に、中国、エチオピア、ロシア、韓国)。1993年には、約75カ国が締結したハーグ条約・「国際養子縁組に関する子の保護及び協力に関する条約」により、国際養子縁組の手続きは全て親と子どもの両国の法務当局の規制に従って行われ、人身売買など不法な養子縁組を防止する措置をとることが義務付けられました。カンボジアはハーグ条約の締結国の一つですが、乳幼児人身売買の疑いなどをアメリカから受けたのを発端に、国際養子縁組に関する法や規制を再度見直しています。今回はその取り組みと今後の発展について書かれている記事を紹介したいと思います。

 

ハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが2002年にカンボジアの男児を養子として引き取り、世界中で注目を浴びました。その一方で人身売買を行う不法な養子縁組斡旋機関が摘発されたりと、まだ色々な課題が残っています。2005年には、英国政府がカンボジアからの養子縁組を禁止したことを受けて、6組のカップルが禁止命令を違法だとして起訴しました。起訴した側の主張の中には、次の二点が含まれていました。第一に、すでにさまざまな審査を通り、手続きに従って養子を受け入れることを許可されていたにもかかわらず、その途中で禁止されたこと。第二に、カンボジアでは膨大な数の孤児がおり、人身売買などの問題があるからこそ、子どもたちの権利を守るために国際養子縁組を許可すべきであること。

国際養子縁組を含め、あらゆる場合でも子供の権利が守られ、健やかに育つことができるような枠組みが整わなければ、子どもの本当の幸せにはつながらないでしょう。実は、ロシアを除き、日本はハーグ条約を締結していない唯一のG8主要国であり、今年になってやっと日本政府は本格的に加盟の方針を表明しました。日本では、ハーグ条約が定める、国際結婚が破綻した後の親権争いの解決法を巡って議論がされてきました。同条約には、国際結婚が破綻して、片方の親が子どもを国外に連れ去った場合、子どもを一度元の居住国に連れ戻して親権争いを解決しないといけない、と定めてあります。しかし、日本人の母親が夫によるDV(家庭内暴力)から逃れるために、子どもを連れて帰国したケースが多くあります。また、日本では共同親権という発想が定着していないため、片方の親が子供を育てる全責任を負い、結果的に十分に子供を扶養することができない、というような複雑な問題にもなっています。別れても子どもへの責任はきちんと果たすという当然の常識がしっかり定着することとあわせて、共同親権についてなど、今後の日本の取り組みにも要注目です。

 

【国際養子縁組手続きにさらなる遅れ】
2011年5月5日 カンボジア・デイリー紙
アリス・フォスター記者

カンボジア政府は、外国人からの養子縁組申請受け入れを再開する計画を2012年4月まで延期すると、政府関係者は話した。本計画は、2009年成立の国際養子縁組に関する法律施行を目的とするガイドラインを策定する時間を政府に十分与えるため、国会提出が見送られていた。

新規申請の手続開始予定日が1年間延期された、とウム・ソパンナラ社会福祉省児童福祉局長は話した。
「我々は法律の施行に関する多くの文書を準備するために(再開を)延期した。」とソパナラ氏は語った。同氏はさらに、(カンボジアの)閣僚会議令と布告の草案について、ハーグ国際私法会議常設事務局からの推薦を待っていたことに触れ「養子縁組は非常にデリケートな課題である。そのため我々は慎重に対応し、このような規約に細心の注意を払うべきだ。」と述べた。

政府が認可する国際養子縁組あっせん機関の数については未だに国際的な同意に至っておらず、この問題が解決しない限り養子縁組は実現できないと同氏は付け加えた。
ユニセフ代表のリチャード・ブライドル氏はこの延期を歓迎した。「これ(延期)により、政府が必要な規制の枠組みを整え、国際養子縁組に対する適切な制度を構築する為の時間を確保できる。さらに、行政職員の訓練と監視システムの整備も可能になる。」と同氏は電子メールを通じてコメントした。

アメリカは2001年、乳幼児人身売買の疑惑を受けて、カンボジアからの養子縁組を禁止した。オーストラリアとイギリスも同様にカンボジアからの養子縁組を許可していない。在カンボジアのイギリス大使館は、新法に基づく手続きの情報を同国教育省に送り、カンボジアの省庁と共に今後調査を続けていく予定であると同国大使館政治局広報担当官のネン・ヴァンナック氏は語った。

オーストラリアはカンボジアの国際養子縁組に関する新法の実際の履行状況について監視を続ける、とオーストラリア大使館広報担当官は電子メールで述べたが、当局がカンボジアからの養子縁組手続きを進めるかどうかについては、明確にしなかった。

BNG法律事務所のブライドル・スイートマン外国弁護士によると、国際養子あっせん機関は今年中の登録開始を見込んでいたという。同氏はこの法律により子どもの人身売買を防ぐことができるとし、「養子あっせん機関は準備が整っており、いつでも活動を開始できる状態だ」と話している。

(櫻井智子・訳 2011/05/22)

カンボジア事務所の長島です。

前回ご紹介した、子どもを守るためのヒントが書かれた、カンボジアへの旅行者用リーフレット「チャイルドセーフ・トラベラーガイド~カンボジアのストリートチルドレンを助ける7つの方法」で触れている孤児院ツアーについて、「孤児院ツアーって一体なに?」と聞かれたことがあります。カンボジアでは、観光客を積極的に招き入れて寄付を募り、子どものためにお金を集めるのではなく、子どもを使ってお金を儲ける孤児院ツアーが存在します。例えば、空港からタクシーに乗った時、運転手に孤児院に行かないかしつこく誘われ、行ってみると寄付をお願いされた人の話を聞いたことがあります。タクシーの運転手は孤児院から仲介料をもらっているそうです。孤児院ツアー・ビジネスは年々拡大していると言われていて、ユニセフによると、カンボジアの孤児院の数が過去5年で倍増しているそうです。今回は、その背景にはどういうことがあるのかが分かる記事を紹介したいと思います。

カンボジアの孤児院で生活している子どもは、両親または片親がいない(死別または、身よりがいない)、親はいるが貧困や虐待などの事情で孤児院に預けられている状況(*)で、記事にあるように大半の子どもには片親がいます。愛情を持って子どもを育てている孤児院ももちろんあり、学校に行けず働かされたり、売られたり、差別されたりするよりは施設で育った方がいいという考えもあります。子どもひとりひとりの状況によって何がその子にとってベストかは違いますが、子どもを施設で養育することは、最後の選択肢であるべきです。その代わりに、可能な限りコミュニティーで育つことができるように、養育者の収入や育児能力の向上を支援することがベストだとシーライツは考えます。

旅行している時に、孤児院訪問を勧誘されたら、この問題について考えてみてください。わたしたち、ひとりひとりの行動が、子どもが搾取されたり、親が子どもを安易に手放してしまうことを助長する可能性があるからです。

 

カンボジアの孤児院は善意ある旅行者の財布を狙う
The Independent 2011年3月25日
プノンペン ロバート・カーマイケル記者
http://www.independent.co.uk/news/world/asia/cambodias-orphanages-target-the-wallets-of-wellmeaning-tourists-2252471.html

カンボジア政府は、国内の12,000人の孤児の大半に少なくともどちらか一人の親がいることが明らかになった後、250施設以上の孤児院に対して調査を始めた。政府は、調査が完了するまでは子どもたちが適切に養育されているかどうかは分からないと話した。

海外からのNGOは、親が子どもを手放しやすくなるように孤児院が子どもに食料、住まい、加えてカンボジアでは特に大切な教育を約束するという甘い言葉を親にかけているのではないかと考えている。子どもを預かることのできたこれらの孤児院では、呼びかけに応じて施設を訪問する慈善団体や欧米の観光客からの多大な寄付を期待できるのである。
子どものための国連機関であるユニセフのカンボジア事務所所長リチャード・ブライドル氏は、調査では両親共に亡くしているのは孤児院の子どもたちの28パーセントであることが明らかになっており、少なくともどちらか一人の親をもつ残りの何千人もの子どもたちがなぜ施設内での養護下に置かれるのか疑問であると話した。ユニセフは、過去5年間で孤児院の数が153施設から269施設と倍近くに増えたことに懸念を示している。そのうちわずか21施設が公的施設で、残りは民間団体によって運営されており、その大半は宗教的奉仕活動に基づいたものなのである。

「施設におけるケアの主な支援者は海外のドナーであり、多くの施設は支援者を引き付けるため観光業に転向し、それによって子どもたちを危険に陥れている」とブライドル氏は話す。

過去5年間にわたるカンボジアの養護施設数の増加率は、同じ期間にカンボジアを訪問した旅行者の数の増加と一致する。カンボジアの三大観光地であるプノンペン、遺跡群のあるシェムリアプ、海岸リゾートのシアヌークヴィルへの訪問客は通常、民間の孤児院を訪れ寄付をしないかというリクエスト攻めに遭う。

ゲストハウスはたいてい旅行客に特定の孤児院を訪れるようにお願いするポスターを掲げている。プノンペンのある孤児院訪問を薦めるポスターには、英語を教え子どもたちと遊ぶことから、食料やおもちゃ、学用品や現金を寄付することにいたるまで、「いろいろなかたちで」助けることができると書いてある。別の孤児院では「カンボジアの子どもたちはあなたの助けを求めています!」と訴える掲示をしていた。ブライドル氏は、「善意を持って訪れた観光客やボランティアでさえ、子どもたちを家族から引き離すシステムを支えている」と話す。

「ユニセフはかつて孤児院は意味があったと認識しているが、施設における保護は最終手段とすべきだ。ひとり親もしくは地域住民によって養育されたほうが子どもたちにとって遥かに良く、コストも低くすむからだ。」とブライドル氏は話す。

ストリートチルドレン問題に取り組むNGOのフレンズ・インターナショナルのセバスチャン・マロ代表は、「孤児院観光ビジネスは、子どもたちを悪用する皮肉なマーケティング策略に過ぎない。このシステムは非常に単純で、みすぼらしく、寂しそうに見える子ども数名を施設に置き、観光客の気を引こうとしているだけだ」と話す。

観光客が渡したお金は通常子どもたちのためにはならない。理由は「そうしないと商売にならないからです。お金はどこかに行き、子どもたちは貧困に置かれたままで、みすぼらしいまま。それが観光客をより引きつけ、荒稼ぎをすることにつながるのだ」と話す。

(多田衣美子・訳 2011年4月25日)
*カンボジア語では、両親または片親がいない、何らかの事情で親から手放された子どものことを「
コッマー・コンプリア」と言い、そういった子どもたちが生活している施設は「マンドール・コッマー・コンプリア」と呼ばれています(マンドールはセンターという意味)。英語に訳すと「orphanage」という言葉は、現在、日本では、孤児院という言葉は使われず、「児童養護施設」という表現されるようになっていますがここではカンボジアでの文脈に合わせて「孤児院」と訳してあります。また、ユニセフの定義する孤児は、「片親または両親を失った子ども」で、フレンズ・インターナショナルは「死別または失踪により両親を失った子ども」です。

▼チャイルドセーフ・トラベラーガイドはこちらからダウンロードできます。
http://www.c-rights.org/childsafe/

▼カンボジアの孤児院について詳しく知りたい方はフレンズ・インターナショナルの「カンボジア孤児院の誤解と現実」をご覧ください。
http://www.friends-international.org/ourprojects/myth-realities_detail.asp

 

カンボジア事務所の長島です。
カンボジアで人身売買の問題に取り組むオーストラリアのNGO、SISHAが警察と連携してタイに出稼ぎに行くカンボジア人を人身売買の被害から守ることができた事例を紹介します。被害が起きる前に人身売買ブローカーを摘発できたことは心強いニュースですが、逮捕されたブローカーがしっかりと処罰されることと、農村部での人身売買や安全な出稼ぎについての啓発で事前に被害を防止することも重要です。シ―ライツは今年度も引き続きHCCと協働で、人身売買の防止プロジェクトを行っていますので活動をご支援ください。
詳しくは、http://www.c-rights.org/join/donation.html

タイに向かったカンボジア人29人の人身売買を阻止
2011年2月21日
SISHA(Stop Human Trafficking and Exploitation:人身売買・搾取の阻止)
http://www.sisha.org/news-battambang-anti-human-trafficking-raid.html

2011年2月某日、タケオ州の29名がタイでの就労を求めて故郷を後にした。彼らを引率していたのは就職あっせん人5名。このあっせん人は米の収穫期が過ぎて間もない昨年11月に、農閑期の雇用を売り文句に村々を回った。29名の中には10歳未満の子どもと幼児が4名と、17歳の少年5名、12歳の少女もいた。不運にも彼らはこの仲介業者が実は人身売買のブローカーで、子どもたちがその後物乞いや児童労働、果てには性産業での労働を強いられるとは思いもよらなかった。一方、人身売買のブローカーもバッタンバン州の人身売買取締警察が彼らの後をつけているとは知らなかった。残念なことにこのような事例は頻発しており、こうした家族がなぜ出稼ぎに踏み切るかという疑問が浮かぶだろう。それは第一に、多くの家族にとって働き口が足りず、厳しい雨季の後には仕事がない状態になること。第二に利益目的の人身売買に関する教育を受けていないことが挙げられる。

SISHA photo.jpg©SISHA

SISHAのプノンペンでのプロジェクト「青少年および女性の権利計画」や、国際移住機関(IOM)、およびHCC(子どものためのヘルスケア・センター)などのNGOでは、カンボジアの各州において安全な出稼ぎに関するメッセージを広めると同時に、人身売買の現実について人々の認識を高める支援を行っている。
残念ながらこの重要なメッセージはタケオ州のこの家族には届かず、彼らは就業先について何の知識もないままタイへの出稼ぎを決めてしまった。

次にわいてくる疑問は、人身売買ブローカーの動機は何かということだろう。答えは単純に「カネ」である。国境を越えタイまで連れて来た出稼ぎ者一名につき100ドルの支払いが約束されている。

小さな子どもたちに付けられた100ドルという値札。彼らは物乞いのギャンググループに売られ、稼いだお金のみならず教育の機会と将来をも奪われていたであろう。17歳の少年の値札も100ドル。彼はタイの材木業者か遠洋漁業船に売られ、過酷な環境で長年にわたって肉体労働を強いられただろう。同じく100ドルで売られるはずだった12歳の少女の行く末は性産業。無慈悲な買春宿のオーナーの管理下で、普通の生活を送る望みを断たれていただろう。

バッタンバン州の人身売買取締警察は人身売買のブローカーが国境に近づいたのを警戒し、SISHAに支援を要請して摘発に踏み切った。警察とSISHAは一行を国境で足止めし、人身売買阻止に成功。人身売買人のブローカー5名(18歳~35歳)全員を逮捕した。

これは人身売買と闘うコミュニティの成功事例である。タケオ州の人びとは自分の家族や友人に何が起きようとしていたのかを知らされ、事前知識のない出稼ぎの危険性について説明を受けた上で村に帰還した。彼らの要望に応じ、SISHAは社会福祉省と協働?して17歳の少年3名をアフターケアする施設に送った。施設では重要な職業訓練と人身売買産業に関する教育を提供し、彼らが二度と人身売買の被害に遭わないよう努めている。12歳の少女も同様の女性専用アフターケアの施設に入った。

介入を行った段階では既に被害が発生しているケースも多い中で、今回の事例はSISHAとバッタンバン人身売買取締警察にとって大きな快挙であった。タイムリーな介入により少年少女が子どもとしての尊厳を傷つけられることなく、将来がより明るく豊かなものとなった。

(2011年3月29日 訳・植田あき恵)


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