子夢子明バックナンバーから

第45号 (2003年) 掲載

インド西部地震復興支援報告

ASAGの報告書と国際子ども権利センターによるモニタリングから

甲斐田万智子(当センター共同代表)

ASAGとは
住民主体の運営
話し合いによる支援先、再建方法の決定
住民による支援金使途の確認
子どもたちの心のケア

ASAGへの送金額【1ルピーは当時約2.68円】
@ 2,197,600円 (820,000ルピー)
A 233,325円 (83,414ルピー)
合計 2,430,925円 (905,414ルピー)

ASAGとは

ラジェシュ

 ASAGは、1972年にアーメダバードが洪水に見舞われた際、スラムで家屋が被害を受けた人々に対して支援を始めたNGOです。代表のキルティ・シャーさんは建築家で、インド政府の国家計画委員会にも名前を連ねるほど実力のある人ですが、スラムや農村で住民自身が再建に参加できるように一貫して低コスト住宅を心がけている人です。事務局長のラジェシュ・バットさんは、とても気さくで、いつも国際子ども権利センターのメンバーを友達として迎え入れてくれます。

 ASAGには、サージャンという子ども部門があり、アーメダバード駅のストリートチルドレンやスラムの子どもたちに創造的な活動を通して、自分に自信をもってもらったり、表現する楽しみを味わってもらったりすることなどをめざしてきました。ここ数年は、電話を通じて子どもを支援するチャイルドラインの活動が活発になり、繊維産業で働く子どもたちの救出活動もおこない、チャイルドラインの場所に子どもたちを一時的に保護することのできるシェルターもつくりました。

 

住民主体の運営

 前号で報告した二つのNGO(DMIとSEWA)同様、ASAGも住民主体の理念をもち、住民のニーズを丁寧に聞きながら住民とともに復興する実践をおこなってきました。インドでは、マハラシュトラ州のラトゥールで1992 年に大地震が起き、政府や世界銀行などは、住民が住んでいた場所とは離れたところに一律に同じような集合住宅を建設しましたが、そのような家には被災者は住む意思はないし、たとえ住んだとしても決して幸せな生活を送ることができるようにはならないと反対活動をし、住民のニーズに合わせた復興建設事業を7 年間にわたって行ったのがASAGでした。

 そして、今回の地震復興活動のあとには、2002年に起きた暴動の復興支援にも携わってきました。そのような活動が認められ、今年9 月には日本住宅協会から今年度の国際居住年記念賞が授与されました(賞金100万円)。地震復興に関して、ASAGは、アーメダバード県ドルカ郡(アーメダバード中心部からの7 つの村において全壊家屋の再建(116軒)と一部倒壊家屋の修繕・改築(54軒)を行いました。そのうち、国際子ども権利センターの支援により、ナニボル村の12軒の新築家屋が建ち、11軒の家が修繕されました。

 

話し合いによる支援先、再建方法の決定

再建した家の家族

 ASAGの住民主体の活動およびその質の高さは、今回モニタリングする中でも随所に見られました。まず、ASAGは、村でどの家庭に再建支援をおこなうかを自分たちで決めるようなことはせず、村会議(全世帯参加)で決めてもらいました。そこで選ばれたのは、必ずしも被害が最も大きかった家庭ではなく、被害はほかと比べて少なくても貧困度合いが高かったり、頼れる親戚がいなかったりする、最もニーズが高い家族でした。その多くが、非常にカーストが低い家庭、かつてのアウトカーストに属する家庭でした。

 家の再建の設計図を作るにあたっては、各家庭と個別に話し合い、なるべく以前の家の特徴をそのまま残す努力をしつつ、敷地面積をより有効に使い、また、より健康的な生活が営めるような工夫をしました。具体的には、屋根裏を利用して部屋数を増やしたり、トイレ・水浴び所を新たに設置したり、換気や採光のために窓をとりつけたりしたことです。

コンクリートバンドを指差す藤岡さん

 次に建築が始まると、最初の1 〜 2軒の建設をデモンストレーションしながら、どのように耐震構造の家を建築するべきかという実地研修を地元の石工や大工に対しておこないました。具体的には、支柱には鉄棒を入れたり、4 段にわたってコンクリートのつなぎ(これがあれば壁が壊れないで震動とともに揺れる)を入れたりすることです。

 モニタリングの際に、ASAGが建築支援した家の隣で、他団体がかかわって再建された家を見ることが偶然できたのですが、その家は耐震構造になっていないばかりか、建てたばかりだというのに見るからにおそまつなつくりになっており、支援する団体が違うと結果がこんなにも違ってくるのかと驚きました。

 

 

住民による支援金使途の確認

再建した家の少女

 さらに、支援金が正しく再建に使われているかということをASAGのフィールドワーカーや村のリーダーが加わった監視委員会がチェックするだけでなく、通帳にプロセスを記録することで各家庭がかかわりました。

 今回のモニタリングでは、そうした村のリーダーと会えただけでなく、ASAGの支援によって再建した家の子どもたちから話を聞くことができましたが、子どもたちは、「地震のときは怖かったけれども、こんなしっかりした家が建って、もう地震がきても大丈夫、と思えるようになった」と口々に話してくれました。

 

 

子どもたちの心のケア

国際ことも権利センターの支援でできた滑り台

 国際子ども権利センターの支援は、子どもたちの心のケアに対しても使われました。幸いナニボル村小学校の校長先生が理解のある方だったので、子どもたちの恐怖を取り除くために震災後にサージャンのスタッフが毎週学校に通い、子どもたちが楽しくなるようなものづくりやゲームを使った活動をしました。このことによって、学校の先生が楽しく授業をすることの大切さを学び、校長先生を含めて、子どもたちと遊ぶようになったそうです。今回の訪問時、インドのお祭りで学校は休みだったのですが、たまたま校長先生が学校にきていて、センターの支援でつくられた遊具で子どもたちと遊んでいました。