子夢子明バックナンバーから

第53号 (2005年冬号) 掲載

インド・プロジェクト

ナショナル・チルドレンズ・タイムズ

−National Children’s Time Issue 2 −(2004年発行)

関西翻訳チーム

 今回は前回に引続き、「デリー子ども権利クラブ」が2004年の下院選挙の前に政党のリーダーへ送った手紙の後編をお届
けします。子どもたちは選挙権がないのにもかかわらず、政治のことを真剣に考え、政治家へ現状の解決を図る政策を実行するように訴えています。

 一方、日本では今秋、衆議院選挙が実施されましたが、皆様が期待された通りの結果となりましたでしょうか。ちなみに、どの政党も「少子化対策」を政策にとり入れていましたが、「子どもの権利」は果たして主眼に置かれていたのでしょうか。「教育基本法」や更には「憲法」も近い将来改定が予想されますが、それによって「子どもの権利」が拡充されるかどうかを真剣に見すえる必要がありそうです。
関西翻訳ボランティア

*ナショナル・チルドレンズ・タイムズというのはバタフライズ支援のもとでいくつかのNGO に所属する子どもたちが共同で発行している新聞です。

 

この手紙を読んで下さる政治家の皆様へ

デリー子ども権利クラブより(1200 人のメンバーが署名)

(1.教育は前号をご覧ください)

2. インド子ども委員会
3. 家事労働
4. 情報へのアクセス
5. 子どものケアと保護に関する法律(2000年制定)
6. 子どもの施設
7. スラムの取り壊し・移転
8. 医療
9. 子ども団体の承認
10. 子どものための銀行
11. 予算配分
12. 家計の向上、雇用の機会、村の生活基盤の整備
13. コミュナリズムを止めてください
14. 遊び

2. インド子ども委員会

バタフライズの子どもたちとスタッフ

 インド子ども委員会を設立することは、ずいぶん長い間政府の懸案でした。私たちは皆様の積極的な働きかけを期待し、できるだけ早くこの決定を実行に移してほしいと思っています。また、委員会が子どもに対して優しく、どんな生活を送っている子どもにも開かれたものであり、路上で生活したり働いたりしている子どもが委員会のメンバーと自由に接触できるようにして下さい。また、委員会が事務所を持つ前に私たちがやってほしいことは、委員長を含む委員会のメンバーやリーダーには、少なくとも数年間、子どもを助けて熱心に働き、子どもや子どもが抱える問題に対処できる知識や能力を備えた人がなるようにとりはからってもらうことです。それから、子ども委員会に関するお金の使い道を決める前に、子どもの団体やフォーラムへこれで良いかどうかをぜひ聞きに来てください。子どもフォーラムの代表者も、委員会のメンバーになるでしょう。

 

3. 家事労働

 私たちの多くは家事使用人として長時間働かされていますが、ほとんど目につきません。たいていはインドのさまざまな州から都会へ売られてきた者で、家に閉じこめられて長時間働かされ、食事はほんのわずかしか与えられず、ののしられる上に虐待され、時には性的搾取も受けます。

 そこで、地域の指導者である皆様にお願いしたいことは、家事使用人として働いている私たちの仲間に対する差別やひどい扱いに、地域の委員会が注意の目を向けるようにすることです。また、仲間が教育や遊び、健康・医療への権利を侵害されないように保証してください。それと、村から仲間を連れ出し、デリーのような都会で家事使用人として働かせるのに手を貸している「職業あっせん所」に対し、規則や指針を作ってくださるように強く求めます。そして、14 歳以下の子どもが家事労働で雇われることのないようにしてください。

 

4. 情報へのアクセス

 政府が子どものために行うさまざまな行政サービスや施設、計画に関する情報については、公表されしだい教えてください。と言うのは、たいていの場合情報に気づかず、利益が十分に受けられないからです。政策立案者の皆様にお願いしたいことは、次の二つです。まず、私たちにかかわるすべての情報だけでなく、このようなサービスも多くの人々に確実に伝えてください。それと、あらゆるメディアに対し、決定事項(チャイルドラインに関する情報など)を子どもに分かりやすい言葉で伝えることを義務づけてください。

 

5. 子どものケアと保護に関する法律(2000年制定)

 この法律が議会を通過したのは、援助が必要な子どものケアと保護のためであり、子どもを苦しめたり虐待したりするためではありません。この法律によって、警察にいっそう強い権限が与えられました。実際、私たちは警察やこの法律にかかわる当局からたびたび苦しめられ、虐待を受けています。どうかこの法律を見直し、もっと子どもの立場に立って、実際の目的にかなうように適切な修正を加えてください。働いていようといまいと、貧しい子どもたちをみな「子どもホーム」へ連れて行く必要はありません。子どもにもっとサービスを提供してください。たとえば、地域の公立学校へ入学することや病院への入院を許可したり、ナイトシェルター(夜に寝とまりするところ)や遊びの機会を増やしたりすることです。

 

6. 子どもの施設

 私たちが政府にお願いしたいことは、子どもが社会で暮らしていけるように手助けする計画を実行に移すことです。いわゆる「子どもホーム」----たいていは刑務所に似ており、私たちは囚人のように扱われます----で暮らすことを強制することによって、子どもを社会から隔離することではありません。子どもが施設から逃げ出すのはこのような扱いを受けるからであり、そのため路上での生活を選ぶのです。私たちは、質の高い教育や身体の発育に応じた設備のある家庭的な施設をつくってほしいと思います。また、それらはもっと子どもに開放されなければなりません。

 

7. スラムの取り壊し・移転

 私たちの大多数はスラム街に住んでいます。スラムが地方自治体や政府によって取り壊されたり、別の地域へ移転させられたりするのは日常茶飯事です。スラムがしょっちゅう移転させられることによって、私たちは勉強を妨げられます。と言うのは、何度も学校を変わらなければならないからです。そこで、私たちが皆様にお願いしたいことは、この流れに歯止めをかけ、州政府がスラムのための適切な法規(移転、水道・電気・トイレなどの基本的な設備の提供、ごみの回収)を作るようにしてください。スラム街に高層アパートが建設され、住民が低利のローン分割払いで購入できればもっと良いのにと思います。そうすれば、親が失業しても収入がなくならずにすみ、子どもが安心して教育を続けられるからです。

 

8. 医療

 働いている子どもにも、大人と同じような医療施設をつくってください。私たちは皆様に、子どものための医療サービス----いつでも治療が受けられ薬が無料でもらえる設備を持つ病院----を整えてほしいのです。そして、病院を子どもが自由に利用できるようにしてください。また、病院が子どもの健康状態に良く気のつくスタッフを配置し、子どもを差別しないようにとりはからってください。

 十分な数の子ども病院をできるだけ早くつくり、すべての子どもが適切で思いやりのある治療が確実に受けられるようにしてください。デリーでさえ、子どもを専門とする病院はたった一つしかないのです。

 

9. 子ども団体の承認

 子ども団体や子どもフォーラム、それから、おとなと同じように子どもにも権利を求めるための闘いを認めてください。皆様や他の意思決定機関にお願いしたいことは、子どもの生活について重大な決定を行う場合、私たちの意見に十分耳を傾けるということです。なぜなら、ストリートチルドレンや働く子どもとして生きていることから来る苦しみを経験するのは私たちで、私たちこそ適切な解決策を実際に提案できる最良の当事者だからです。

 

10. 子どものための銀行

 ストリートチルドレンや働く子どもは、配給カードを持っていませんし、住む場所もありません。だから、銀行へお金を預けることができないのです。だれかにお金を預けると、まったく返してくれないか、必要な時に引き出せません。たとえ引き出せても、預り料としていくらか取られてしまいます。そこで、ストリートチルドレンや働く子どもが、銀行を簡単に利用できる制度を作って下さい。それがむずかしい場合は、子どものために銀行をつくって下さい。

 

11. 予算配分

 閣僚や国会議員は、率先してさまざまな社会福祉を始めるため、予算を適切に配分する責任があります。子どものために福祉政策を行う時は、予算をすべての子どもへ十分に配分して下さい。

 

12. 家計の向上、雇用の機会、村の生活基盤の整備

 私たちが現状に甘んじているのは貧困のせいで、すべての政党に貧困をなくすような政策をとってほしいと思います。親の仕事が保障され、賃金が適正に支払われるならば、子どもは幸福な生活を送れます。生まれた町や村では雇用の機会がないため、私たちの家族の多くが都会へ移住します。私たちには、都会で職を探す以外に選択肢はありません。家族が故郷を離れる必要がなくなるように、選挙区の町や村を開発して雇用の機会を生み出して下さい。そうすれば、きっと子どもも自分や家族を支えるために働く必要がなくなり、自由に学校へ行くことができ、楽しい生活が送れます。安全な飲み水やトイレ、電気などの生活基盤も整備し、利用できるようにして下さい。

 

13. コミュナリズム*を止めてください

 政党やリーダーは、コミュナリズムに反対する行動を直ちに起こして下さい。子どもは最大の犠牲者です。この問題についてみんなに適切な教育をおこない、すべてのメディアを使ってそれぞれの宗教グループ・カーストグループが仲良くできるように説得をお願いします。私たちはみな同じインド人です。宗教やカーストによって対立しないようにして下さい。

 

14. 遊び

 働く子どもを差別せず、すべての子どもが公園で遊んで楽しむことができるようにして下さい。遊ぶ施設がなければ、多くの子どもがギャンブルにふけったり、悪い映画を見たりしてしまいます。

(以下、次号に続く)

 


* コミュナリズムとは、特定の宗教や言語などのアイデンティティによって集まった集団がほかの集団に対して持つ敵対意識(参考:小川忠著「ヒンドゥー・ナショナリズムの台頭」