お知らせ

貧しい人にとって職業訓練を受けることは最良の選択肢か

カンボジアだより

2011年09月25日

 

こんにちは。
インターンの深川です。
夏休みの二か月があっという間に過ぎ、8月いっぱいでインターンを任期修了しました。

 

子どもの権利が守られる社会を築き上げる上で、シーライツが大切にしている「エンパワーメント」という考え方は、学問的な知識としてはもっていたつもりでしたが、どのようにして現場で実践されているのかを今回のインターンを通して知ることができ、たいへん勉強になりました。まわりの大人だけでなく、子どもたちが自分のもっている権利を理解し、主張でき、自らがそれらの権利を守れるように「エンパワ―」する教育やトレーニングを行う重要性を改めて考えさせられました。子どもが職業訓練を受けられる権利は子どもの権利条約第28条で定められています。国際機関や海外のNGOへの「援助依存症」が世界各地で深刻化し、警鐘が鳴っている中、現地の人が海外援助の依存から抜け出し、自立するために「エンパワーメント」はますます必要不可欠になるでしょう。

子もたちが貧困から脱出し、強制労働や人身売買の被害に遭わないようにするためには、具体的にどのような形で「エンパワ―メント」を進めるべきか、大きな課題です。例えば、子どもの「エンパワーメント」を実現する重要なステップとして、まず国が責任をもって子どもが全員、基礎教育を受けられるように環境を整えることが挙げられます。さらに、基礎教育を受けた後、学問を続けたい子どもには勉強を続けるチャンスを与え、そうでない子どもには職業訓練の機会を提供することなども、主な選択肢として考えられます。

今回ご紹介する新聞記事は、シーライツが2004年から支援してきたフレンズ(カンボジア語でミッサムラン)が若者に対して行っている職業訓練の成果と課題に焦点を当てています。専門的な技術を身につけて自立した生活を送れるようになった若者は数多くいるのですが、路上で物を売ったり、物乞いの生活を強いられてきたストリートチルドレンに職業訓練を提供し、ひとりだちできるようにしていくことはたやすくはありません。職業訓練によって得られる長期的な利益を理解してもらうこととその技術で一生涯収入を得られるようにすることは大変難しいことですが、フレンズはその難題に日々取り組んでいます。

 

「貧しい人にとって職業訓練を受けることは最良の選択肢なのだろうか」
プノンペン・ポスト紙 2011年8月10日号
Is acquiring vocational skills the best option for poor people?
10 August, 2011 Phnom Penh Post

プノンペン在住のキム・ソフィアさんは、オリンピックマーケット近くの活気のある通りに小さな店を借りて、自分の美容院として経営している。驚くべきことに、彼女はまだ19歳。さらに、彼女は8年生で学校を中退していた。

「私は勉強には興味がないのです」「学生だった頃、私はよく友達と学校をサボって、カラオケに行ったり、バイクに乗ったりして遊んでいました」と彼女は記者に話した。

もっと悪いこともしていたと彼女は告白したが、詳しい話は控えた。

娘のこのような状況を把握し、もっと悪い目には遭わせたくない、とキム・ソフィアさんの両親は彼女に職業訓練をさせるべきと決めた。

彼女は昔からおめかしをして、お化粧をするのが好きだったので、自宅近くの美容院で修業を始めた。それから一年の見習い期間中、彼女は300ドルを稼ぎ、今では、優れたヘアー・スタイリスト及びメイクアップ・アーティストとなった。まさに多才なビューティー・クィーンだ。

「学んだ技術でけっこう稼げるんです」とキム・ソフィアさんは笑顔で話した。

 

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                  cPhnom Penh Post

専門的な技術を身につけることは、金銭目的以外の理由でも、従来の公教育に代わる、価値のある選択肢になり得る。ソフィアさんのように、専門的なスキルを学ぶことは、人生を正しい道へ戻すことにもつながる。

若者が一銭も払わずに、新たに職業訓練を受けられる場所が数多く存在する。

ブッティー(仮名、23歳)は、以前麻薬中毒に悩まされ、家族とも悪い関係にあった。現在、彼は、ストリートチルドレンが新たに幸せな生活を送れることを目標に活動しているNGOのミッサムランMith Samlanh(訳者注:フレンズ・インターナショナルの前身でいまはパートナー団体)のもとで、ヘアー・スタイリストになる訓練を受けている。

「中学生の時、両親が離婚したんだ」と一人っ子のブッティーは打ち明けた。ヘアー・スタイリストという大好きな職業の訓練を始めてからもう三年以上経ち、近ごろは自分のヘアー・サロンを開きたいと願っている。

 

camboda(1).jpg                 cPhnom Penh Post

このような成功例がある一方で、自分勝手な若者が生産的な国民に変わるのは決して簡単ではない。政府や、国内や海外の団体によって、技術や職業訓練が無償で提供されているが、いくつかの理由によって、全く参加する意欲を見せない若者や子どももいる。

貧しい家庭の子どもは、家族を養うために働かないといけないため、技術訓練コースに参加させるのは難しいと、NGOのフレンズ・インターナショナルのコミュニケーションズ・マネージャー、クッ・ピアルンさんは言う。

「家庭状況が厳しいため、技術訓練を受けることを躊躇するストリートチルドレンがいる。家族のために、路上で物を売ったり、物乞いをせざるを得ず、休むことはできないのだ」と、クッ・ピアルンさんは言う。このような子どもたちの親は、技術を身につけることによって得られる長期的、かつ多くの利益ではなく、小さな商売で得られる短期的な利益のことしか考えていない、と付け加えた。

ミッサムランは、24歳以下の子どもたち1600人に、無償で教育と職業訓練を提供している。

「私達のチームは、常にもっと多くの子どもたちをここに呼んで、学べるようにしています」とクッ・ピアルンさんは言う。

労働・技術訓練省は、子どもや若者、また貧困で苦しんでいる大人、障害者、および他にも弱い立場にいる大人たちのために、実用的なスキルをもっと学べるよう、技術・職業訓練を強化するプロジェクトを開始した。訓練は、国内生産力を改善し、正規、および非正規の雇用を増やし、農村地域の雇用も増やすことを目的としている。

このプロジェクトの目的は単純だ:貧困を減らし、経済市場の需用に応えられる、熟練した労働力を提供すること。2015年までには、主に次の三つの部門に卒業生を送り込むことを目ざしている:機械工業、建設業、さらに情報・コミュニケーション技術産業。また、地方の訓練センターで学ぶ女性の数を増やし、自営業を促進しようとしている。

美容師とネイルの訓練を受けているスレイ・ポウさん(19歳)は、かつて孤児だった。他の人のために働き、いつか自分のお店を開けるように技を磨く、と語っている。

「習得したスキルによって、よりよい生活が送れるようになることを願っています」と彼女は明るく話していた。
(翻訳 深川久美子)

子どもの権利についての研修や人身売買・児童労働に関する子ども向けの啓発に必要な文房具を配布することができます。

童話や物語の本を5冊購入し、本が傷まないように補強してから図書室に届けることができます。

村の清掃と衛生について学ぶ「ゴミ拾いキャンペーン」を1回開催することができます。