お知らせ

国連、アジア諸国に人身売買取締法の施行を要請

カンボジアだより

2011年12月5日

 

みなさん、こんにちは。
ニューヨークでシーライツを支援する翻訳グループの小味です。

米国務省発表の人身売買に関する年次レポートが今年も発表されました。私たちの翻訳グループが発足した2009年にも同じテーマの翻訳を手がけました。その当時は、前年度のめざましい努力が評価されてレベル2に格上げとなったカンボジアが、2009年度は改善傾向に後退がみられ、レベル2の監視リストに載ることになったという残念なニュースでした。

その後、政府の努力がみられ、本文中では、タイ、カンボジアをはじめとする大メコン圏における人身売買問題について、国連関係者が包括的な取り組みの必要性を提言していますが、「言うは易し」です。タイ国内では都市部と農村、大メコン圏ではタイとタイ周辺諸国の経済格差が根本的な問題でしょう。もちろん、その是正も簡単なことではありません。

先日、カンボジアのあるローカルNGOから貧困地区での活動写真をもらいました。私が現地で目にしていた5年前と比べて、スタッフの表情はより自信に満ちていて頼もしく思えました。一方で、活動の対象の子どもたちの身なりや栄養失調からくる茶色い髪の毛などは少しも変わりがなく、プノンペンはとても発展してにぎやかになったと聞くのに、市内から少し離れた場所では相変わらず人々は貧困と闘っているのだと、辛い気持ちになりました。人身売買は貧困と深くかかわっているので、現場に密着したローカル団体の活動、それを支援するC-Rightsのような団体がまだまだ必要です。

さて、私たちニューヨーク翻訳グループは、次々にメンバーが帰国し、今回の翻訳者・植田あき恵さんも10月下旬にニューヨークを発ちましたが、帰国組も引き続き積極的に作業に関わる意気込みです。今後もメールのやりとりを通じてチェックしあいながら皆さんにとって読みやすい翻訳を心がけていきたいと思います。(小味かおる)

 

国連、アジア諸国に人身売買取締法の施行を要請

ボイスオブアメリカ 2011年8月19日
ロン・コーベン記者(バンコク)

米国務省発表の「2011年人身売買報告書」において、カンボジアの評価は「ランク2」に据え置きとなり、「ランク2:監視対象国」である中国、および人身売買の主要な送り出し国とされるミャンマーより上位に分類された。その他アジア諸国では、インドネシア、ラオス、シンガポールがランク2に格付けされている。注1)

国連高官は、タイ、カンンボジア、ラオスをはじめとする大メコン圏諸国では、人身売買防止を目的とする既存の法律がうまく適用されていないと述べている。人身売買問題を担当する国連特使が、タイにおける出稼ぎ労働者搾取の防止に向けた取り組みについて10日間にわたる評価を行い、総評をまとめた。

ジョイ・エゼイロ国連人身売買特別報告官は、各国が人身売買と闘い既存の法律を施行するためには、包括的な取り組みを導入することが必要だと語った。

多少の進展も

エゼイロ氏は、タイ当局は「顕著な進展」を遂げたものの、政府関係者は依然として不法な移住者を保護し汚職を撤廃するための十分な措置をとっていないと述べた。

「必要なのは人身売買と闘う包括的な取り組みです。最大の課題は法の施行にあります。優れた法律と国をあげた計画が存在し、実際、人身売買被害者を支えるリハビリ面で大きな成果があげられても、法律の適用との間にずれがある。人身売買ブローカーの起訴と処罰を含めた包括的な法の施行がなされるべきなのです。」とエゼイロ氏は語る。
同氏によれば、タイにおける搾取防止の取り組みを評価した結果、同国は依然として人身売買の供給地・経由地・目的地であるという。

報告書によると、タイ人は中国、台湾、香港、ドイツ、イスラエル、日本、南アフリカ、米国に向けて売買されている。同時に、タイはカンボジア、ミャンマー、ラオス、ベトナムからの人身売買受け入れ国でもある。

子どもが標的に

エゼイロ氏は、タイ国内でも子ども(山岳部族の子どもたちを含む)の人身売買がまん延していると話す。

人身売買は児童買春や児童ポルノ、児童買春観光を助長している。人身売買ブローカーは、家事労働、物乞い、強制結婚、代理出産などにも手を広げている。報告書は、農業、建設、漁業といった産業における被害件数の増加を示している。

大メコン圏一帯の犯罪組織にとって、人身売買は数百万ドルの儲けが見込まれる事業となっている。

国連の国際労働機関(ILO)は、カンボジア、中国、ラオス、マレーシア、タイ、ベトナムからの出稼ぎ労働者を保護するプログラム実施の支援を行っている。

しかし、ILOバンコク支局の主任技術顧問を務めるニリム・バルア氏によれば、こうした努力にもかかわらず、カンボジア、ラオスを含む地域諸国では、出稼ぎ労働の規制を改善するための法律が適用されていないという。

「大メコン圏諸国では、出稼ぎ問題の管理と統治が引き続き政府の主要な懸念事項となっています。ラオスとカンボジアを例に挙げれば、政府が自国の法令を制定し施行する能力すら疑問視されており、政府そのものが能力向上と訓練を行う必要があります。」とバルア氏は話す。

包括的取り組み

国連薬物犯罪事務局(UNODC)のマーティン・リーブ地域顧問は、企業を含めた地域の他セクターを巻き込み、法的措置の枠を超えた人身売買の防止を実現するためには、包括的取り組みが必要だと同調する。

「法的措置、政府の政策、市民社会。この三者のいずれも決してこの問題を単独で解決できません。そこで企業コミュニテイによる多角的な取り組みが重要となるのです。企業が自社の業務を調査し、生産過程のあらゆる時点において労働力の搾取が行われていないかどうかを確かめる。これこそがカギです。」とリーブ氏は述べる。

タイは過去数年にわたり、100万人を超える出稼ぎ労働者の書類整備と登録を実施した。大半はミャンマーからの労働者で、カンボジアやラオスからの出稼ぎ者も含まれている。漁業を主とする直近の労働者登録キャンペーンは今月終了した。エゼイロ特別報告官による詳細報告書は2012年中期に国連に提出される見込みである。

注1)「ランク1」は、米国「人身売買被害者保護法」に基づく最低基準を十分に満たしている国、「ランク2」は、同基準を満たしていないが、同基準到達のため相当の努力をしている国、「ランク2監視対象」は、同基準を満たすために相当の努力をしている一方、成果が出ていない国、「ランク3」は、同基準を満たしておらず改善努力もなされていない国としてランク付けされる。

(2011年9月11日  訳・植田あき恵)


 

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