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カンボジアの事業地で支援対象家庭を訪問

カンボジアだより

2012年01月23日

 

こんにちは。シーライツスタッフの小和瀬です。シーライツは、カンボジアのNGO・HCCと協働で、カンボジア・スバイリエン州で、子どもの出稼ぎや児童労働を防止するための事業を2006年より続けています。
貧困家庭では、家族全員を養っていくのに十分な収入が得られないため、大人だけでなく子どもまでもが、都市部へと出稼ぎや物乞いに行きます。その結果、子どもたちは、学校を休んだり、やめてしまったりすることになり、教育を受ける機会を失ってしまいます。出稼ぎや物乞いの途中で、搾取や暴力などの人身売買の被害に遭うケースもあります。
シーライツは、最貧困家庭の子ども、特に人身売買のリスクが高い少女が学校に通い続けることができるよう、学用品や制服、主食となるお米を配布する「通学支援」と、家庭の収入を増やすために、家庭菜園の指導、農耕牛の貸出、マイクロクレジットを支援しています(「生計向上支援」)。

今回は、スバイリエン州・コンポンロー郡クサエコミューンで先月訪問した支援対象の家庭の様子をご紹介します。


interview(2).jpg
 通学支援を受けている少女・クッチャンター(仮名)は、15歳で小学校6年生。彼女には他に11歳で小学校3年生になる妹と、もっと幼い妹がいます。
父親は43歳で農業をしていますが、足が悪く、0.5ヘクタールの自分の農地を耕すのも困難です。母親は40歳で、父親の農業を手伝っています。
父親は、中学校1年生までの教育を受けていますが、母親は小学校4年生までしか教育を受けておらず、もう、読み書きをほとんど覚えていないと言います。
0.5ヘクタールの土地で農業をやっていても、家族が食べる半年分のお米しか収穫できません。しかし農業以外には収入がありません。
18歳になる彼女の兄は、2ヶ月前に学校を辞めて、精米を請け負う工場で働き始めました。

interview(1).jpgのサムネール画像彼女はシーライツ(C-Rights)とHCCの通学支援を受けて、今、毎日学校に通っています。学校では、クメール語(国語)、算数、理科、社会を勉強しています。家から学校までは歩いて15分。生まれてから今まで、学校と家の往復以外、遠くへ行ったことはないと言います。
「学校は中学校を卒業するまでは続けたい」、「将来は、テレビで見たことのある仕立屋さんになりたい」と話しています。


interview(3).jpg通学支援を受けているのに、学校に行っていない11歳の少女・チャンター(仮名)。
彼女は、他に6人の男の兄弟がいます。
彼女が学校に通えなかった理由は、母親が妊娠し、赤ちゃんが生まれたからでした。その赤ちゃん以外にも弟が6人います。
自分の農地を持っていない彼女の父親と母親は、日雇い労働者として他人の畑で働いて収入を得ています。1日の稼ぎは10,000リエル(約2.5ドル)。
母親が妊娠し、畑での仕事や家事ができなくなったので、彼女が長期間にわたって学校を休み、母親の代わりに畑仕事と家事全般をやることになりました。
カンボジアでは、娘は家族を助けるものと考えられているので、学校に通うよりも家族のために働くことが優先されます。
また、「家族計画」という考え方や避妊具の使用が普及していないために、貧しいにもかかわらず子どもが多く、生活がさらに苦しくなってしまうのです。
私たちが訪問したとき、彼女は目を輝かせて学校には戻りたいと話してくれました。生まれた赤ちゃんも大きくなったので、母親も実はもうチャンターを学校に戻したいのだけど、学校からまだ許可が出てないとのことでした。15日学校を休むと特別な許可が出ないと学校を再開できないのだそうですが、今、申請をしているとのこと、一日も早く許可がおりるといいねと話しました。
チャンターは高校まで学校を続けて、将来は中学校の先生になりたいと思っています。

 


生計向上の支援を受けている家庭
父親は、37歳で農業をしています。ある時、病気になり、注射を打ってもらったところ、片手が不自由になってしまったということです。母親は40歳。娘は10歳で小学校3年生です。
C-Rightsと HCCから、野菜の種をもらい、家庭菜園で育てています。
特に、空芯菜や菜っ葉を育てています。
空芯菜は植えてから15日で収穫できるので、乾季の12月~2月の間に2回収穫できます。菜っ葉は農薬が必要になるので、お金と手間がかかります。
家庭菜園という小さな規模なので、収穫できる野菜の量はとても少ないのですが、村の中で野菜を売ると、1束500リエル(約8円)くらいの収入になります。
得られた収入で、娘の学用品を買ってやることができたそうです。
しかし、今年(2011年)は、大洪水の影響で全く、野菜が育たなかったと残念そうでした。

interview(4).jpgでも、C-RightsとHCCから借りている雌牛から子牛が生まれ、今、生後1ヶ月たったところです。
以前に、1頭生まれたのですが、病気で死んでしまったので、元気に育ってほしい、と期待しています。


生計向上支援を受けている家庭
父親は37歳、母親は31歳で農業をしています。
小学生の娘が2人いて、上の娘は通学支援も受けています。

父親と母親は、土地を借りて農業をし、収穫した作物を売ったお金で、土地代を支払っています。借地は0.5ヘクタールと狭く、収穫できるお米は4、5ヶ月分です。
残りの時期は、建設労働者として働いて収入を得ています。

interview(7).JPGC-RightsとHCCの支援で、菜っぱと空芯菜を育てています。(写真の左側の黄緑色の部分が菜っぱです)
自分たちが食べる野菜が収穫でき、余った分を売ることもできるようになりました。
野菜を売った収入は40,000~100,000リエル(10~15ドル)になり、食料品や衣服、娘の学用品を購入するのに使っています。

借りている雌牛が子牛を産み、だいぶ大きくなりました。
子牛は、今、250ドルくらいで売れる大きさですが、雌牛なので、売らずに手元に残したいそうです。母牛の方は、2頭目を半年後に出産する予定です。
将来は、牛を売ることで収入を安定させて、子どもたちを学校に通い続けさせたいと思っています。

interview(6).jpg10家庭で作る自助グループでは、各家庭が毎月2,000リエル(0.5ドル)を出し合って、マイクロクレジットを運営しています。自分たちがお金を借りられる順番がまわってきたら、豚を購入したいと思っています。

生活が厳しいなか、どの家庭も親が娘たちを学校に通わせたいと思っていることが感じられ、少女たちも学校に通い続ける意欲がありました。

子どもの権利についての研修や人身売買・児童労働に関する子ども向けの啓発に必要な文房具を配布することができます。

童話や物語の本を5冊購入し、本が傷まないように補強してから図書室に届けることができます。

村の清掃と衛生について学ぶ「ゴミ拾いキャンペーン」を1回開催することができます。