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熱心なリーダーが参加し、どんどん進歩するタナオの活動 ~カンボジアプロジェクトを再び訪問して

カンボジアだより

2013年08月29日

 

熱心なリーダーが参加し、どんどん進歩するタナオの活動 ~カンボジアプロジェクトを再び訪問して

シーライツインターンの橘田です。今年の2月に引き続きシーライツの活動地であるスバイリエン州・タナオコミューンを訪問してきました。今回私が訪問した日は2日間という短い時間でしたが、2月に比べてスバイリエン州・タナオコミューンがさらに活気づく活動が行われていた様子をお伝えします。

 シーライツの現地スタッフのブントゥーンさんが、タナオコミューンの各村のリーダーにトレーニングをするセッションを拝見させて頂きました。午前と午後のセッションに分かれていて、午前中はブントゥーンさんの情熱があるお話で始まり、その後、シーライツの甲斐田代表理事がリーダーたちに「子どもの権利」についてのセッションを行いました。

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 甲斐田は、現在おこなっているカンボジアプロジェクトで大切にしている野菜の有機栽培がどうして大切なのかを「子ども」の生きる権利という視点から話しました。そして、子どもたちにとって一番良いものは何か、という質問を投げかけたところ、リーダーからは、「教育を受けさせること」、「子どもたちをどの活動にも参加させること」また「子どもたちに参加させるチャンスを与えること」などの答えが挙がりました。このようなリーダーたちの答えを聞いて、親は子どものことを思い野菜を育てているのであり、子どもの権利をきちんと理解しているということが分かりました。これもまた、現地スタッフの熱い思いによる啓発活動の結果だと感じました。その後甲斐田が「子どもの権利」の4つの領域(1.生きる権利、2.育つ権利、3.守られる権利、4.参加する権利)の中には具体的にどんなものがあるかのかを説明をしました。特に、子どもの参加の権利は、カンボジアの社会では実現するのが難しいかもしれないが、みなさんがこのように集まることが大切なように子どもたちも集まって話し合うことが大切であることを強調していました。
 リーダーからは、質問や自分たちで行っていることを共有する発言がありました。その中のいくつかを紹介します。

1.「どのようにしたら子どもを活動に巻き込めるかわかりません。」
(甲斐田)子どもの「声」を一番に聞くことが重要。子どもたちの「声」に耳を傾けることで、子どもたちは心を開いてくれて、話してくれます。きちんと聴くことで、子どもたちはエンパワーされ、自信をもつことができます、と説明。

2.ポウマオ小学校の校長先生:「私の小学校では子ども会議を設けています。子ども会議は在籍している子どもたちから選ばれ、学校での問題、家庭での問題、コミューン内での問題などを話し合います。また、子ども同士の話し合いを学校の中だけで終わらせるのではなく、それをコミューン評議会(村議会のようなもの)にも提出しています。」

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 この小学校の校長先生が子どもを積極的に巻き込み、おとながわからない子どもの状況をコミューン長(村長より上)に報告することで、子どもたちが不安や恐れを抱かないで生活できる環境を作り出していることが、強く伝わってきました。

 このほかにも多くのリーダーが質問や事例を出してくださり、みな子どもの権利がどれだけ重要で「権利」が子どもたちを守る強いものだということを理解しているように見えました。これは私が2月にお会いした農民代表(キーファーマー)を見ていて感じたことでもありますが、今回は、村のリーダーである人々が理解していたので、「子ども権利」が浸透していることを実感しました。

 午後のセッションではまずブントゥーンさんが午前中のおさらいをしました。
そのあと、有機農業に成功した場合、どれだけ多額のお金を化学肥料や農薬に費やさないですむようになるか、つくった野菜の売上が自分の収入になり、また自分たちの食糧になるのかを説明しました。

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 今の状況は、商人が農民に近づき「これを使えば野菜はたくさん収穫できる」というだましの手を使い「農薬」を販売してきます。タナオの農民は少しでも多くの野菜を作りたいがために「農薬」を使い、足りなくなったらお金を借りてまでして「農薬」を買いに行かなくてはならないと考えています。ですが、野菜がたくさんできても、「農薬」を買うために借りたお金を返さないといけないため、利益を全部返済にあて、結局彼らの家族が食べる分さえも残らないという状態です。リーダーはこれらの「負」の連鎖をなくすためにどうしたらいいかという説明を蒸し暑い事務所の中で一所懸命に聞いていました。
一日も早く健康で、人に害を与えない野菜を作りたい、という気持ちがすごく伝わってきました。

 そのあと、グループに分かれて以下の4つのテーマについて話し合いました。

1.チームワークにとって大切なことは?
2.農民にとって農業の大切さとは?
3.なぜ農民は年間を通じて野菜を育てていないのか?
4.年間を通じて野菜を育てるために何をしなくてはならないのか?

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リーダーたちは、以下のように答えていました。

1.(チームワークで大切なのは)嘘をついたりしないで本当のことを話すこと
2.(農業が大切なのは)貧困を減らすため、食糧安全保障のため。お米があれば鶏や豚の飼育に困らない。お米が十分にあれば魚を買うお金を節約できる。
3.(年間を通して野菜をつくれないのは)水不足、技術不足、土地が足りない、雨季は水浸しになる、関心がない、責任感がない
4.(年間を通じて野菜をつくれるようになるには)畑を高くする、雨に強い良い種をみつける、水路、ため池、井戸など水を確保する

 今回のトレーニングを受けていたリーダーの中に1名だけ女性がいました。グループディスカッションを行っている際に私がそのグループを覗いたところ、彼女の方から「おいで、おいで」と声をかけられ、私はそのグループに入り、言葉も分からないまま、どのように話し合われているのかを見ていました。やはりリーダーということもあり、彼女はグループの男性をまとめ、話し合いを始めました。性別を問わず、みんなが一つになり、意見を出し合っていく様子を見て、彼女がたくましく見えました。彼女には今後もコミューン内で活躍してほしいです。

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 今回で私のカンボジア事業の訪問は2回目です。1回目の訪問よりはるかに進歩していて、リーダーが熱心にトレーニングを受けようとする姿勢を目の当たりにすることができました。また、熱心に聞いているリーダーの姿勢に応えようと日々力を入れているシーライツの現地スタッフ。私はクメール語が分からないのですが、シーライツのスタッフの事を村人は尊敬し、信頼しているのだとあらためて感じました。まだまだこれから進歩していくプロジェクトにみなさんも注目してほしいと思います。

(おまけ)
 夕方、シーライツに新しく加わった現地スタッフのソフィアさんが無料で子どもたちを招き事務所で英語のレッスンを行っていました。その数は事務所からあふれんばかりの子どもたちで、その多くが英語を学びたいと必死になっていました。また、彼は英語だけではなく、クメール語の授業で文学も子どもたちに教えているそうです。私はここで改めて子どもたち自身が勉強の必要性をどれだけ理解しているのかを目のあたりにしました。

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 英会話をみんなの前でやりたいと必死に手を上げ続ける子ども。学ぶ大切さと楽しさが子どもたちの顔に浮かんでいました。

子どもの権利についての研修や人身売買・児童労働に関する子ども向けの啓発に必要な文房具を配布することができます。

童話や物語の本を5冊購入し、本が傷まないように補強してから図書室に届けることができます。

村の清掃と衛生について学ぶ「ゴミ拾いキャンペーン」を1回開催することができます。