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紙芝居を通してタナオコミューンの子どもの問題を考える

カンボジアだより

2014年04月26日

 

紙芝居を通してタナオコミューンの子どもの問題を考える

※今回のカンボジアだよりは、2月に活動地のタナオコミューンを訪れたインターンの橘田美優さんが執筆しました。

2014年2月にシーライツの甲斐田代表理事と、活動地のタナオ・コミューンに足を運びました。前回の訪問が2013年の夏だったので5カ月ぶりです。

今回は、シーライツの支援によってピア・エデュケーターとして活動する子どもたちがどのように少しずつ変化しているのかを見てくることができましたので、みなさんにご紹介したいと思います。

この日は、Traok村の子どもたちが村長さんの家に集まり、シーライツが啓発活動の教材として作成したフリップチャート(紙芝居)を使用し「キム」という女の子の話の読み聞かせを行いました。キムちゃんの物語はタナオコミューンの子どもや住民に聞き取り調査を行い、様々な子どもの経験を組み合わせて作られました。

フリップチャートを読むのは、子どもたちの代表「ピア・エデュケーター」の男の子です。

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以下、キムちゃんの物語の初めの部分です。

 「キムちゃんは4人の弟がいる女の子です。両親は離婚しています。お母さん私たち5人を育てるために働きに出て忙しくしています。だから、お母さんはキムちゃんのことを世話もできない日が続きます。キムちゃんはお母さんの大変な姿を毎日見ているので、朝は早起きをして飼っている水牛の世話をしています。ほかにも家事をしているので、キムちゃんは学校に行く時間がほとんどありません。けれども、キムちゃんは学校に通い、友達と遊びたいと思っています。
 中華正月のある夜、お母さんにともなわれて暗い道を歩き、バスに乗ってある場所へ向かいました。着いた場所は、隣国ベトナムのホーチミン。キムちゃんはタナオの村では見た事がない高い建物、聞いた事がない言葉に驚きます。キムちゃんは、ここホーチミンで、物乞いをすることになってしまいました。
 キムちゃんは毎日のように高いビルから出て来る人々に声をかけるように教えられました。けれども、キムちゃんは何が何だか分からなくて、戸惑ってしまうことばかりでした。
 数日後、キムちゃんは勇気を振り絞って、2人の男性のところへ駆け寄りました。男性2人はキムちゃんの事をかわいそうな顔で見つめています。キムちゃんはベトナム語が話せないので、彼らが何を言っているのか全くわかりません。そして、カンボジア語とジェスチャーで、必死に男性2人に「お金をください」と、訴えました。
 すると男性2人は顔色を変えました。そして、いきなりキムちゃんは腕を強く握られました。キムちゃんは恐怖と不安でいっぱいになり、握られた腕を振り払ってその場から逃げだしました。」

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じっと話に耳を傾ける子どもたち cC-Rights

集まった30人ほどの子どもたちは静かに、一言もしゃべらないで真剣な目をしてピア・エデュケーターの紙芝居の話を聞いていました。
 私のそばにいた小学校の低学年くらいの子どもは、「ベトナムに物乞いをすると、こんなに恐ろしいことが起きるのか…」とはっとしたような表情をしていました。

読み聞かせ後、カンボジア人スタッフのブントゥーンさんが子どもたちにつぎのように話しかけていました。

スタッフ:「みんなは、こうした物乞いをさせられている子どもの状況を今日、ここに来ていない友だちにも伝えることができるよね?」
子どもたち:「(元気な声で)はい!」

スタッフ:「フリップチャートに登場したキムちゃんは、どのような権利を奪われていますか?」
子どもたち:「(口々に)教育の権利」、「保護される権利」、「両親や警察、おとなから守られる権利」

ブントゥーンさんが子どもたちに投げかけている質問を聞き、子どもたちがそれにきちんと応答できている姿を見て、私は、「権利」というものがいかに子どもたちに伝わっているのかについて理解することができました。

日本の大学に通っている私は、子どもの権利についての授業を受けていても、タナオコミューンの子どもたちのように、きちんと答えられない大学生を多く見かけます。大学生は、もう子どもではない、という意識からなのでしょうか。もう子どもではなくなっても、子どもの周辺にいる私たちは日々、子どもの権利の意識をし、責任を持たなければならないといけないと思いました。そして、ピア・エデュケーターたちの姿を見て、私たちも子ども権利について国内及び国外で発信することが求められているのではないかなと思いました。

 子どもたちは、「児童労働」「物乞い」「出稼ぎ」という言葉は知っていますが、今回のようにフリップチャートを通して、具体的な話を聞くことにより、より想像しやすく身近に感じられたのではないかと思いました。今後、ピア・エデュケーターが増え、子どもから子どもへ知識や活動が広がり、危険な出稼ぎがなくなるようにと強く願っています。

シーライツ・インターン 橘田 美優

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甲斐田代表理事とTraok村の村長さん・子どもたち cC-Rights

子どもの権利についての研修や人身売買・児童労働に関する子ども向けの啓発に必要な文房具を配布することができます。

童話や物語の本を5冊購入し、本が傷まないように補強してから図書室に届けることができます。

村の清掃と衛生について学ぶ「ゴミ拾いキャンペーン」を1回開催することができます。