シーライツ プロジェクト

カンボジア・子どもの人身売買・児童労働防止事業

事業名称 カンボジア・スバイリエン州コンポンロー郡タナオ・コミューンにおけるベトナムへの出稼ぎによる子どもの人身売買及び児童労働防止プロジェクト
事業期間 2012年4月~2017年3月
事業対象地域 カンボジア / スバイリエン州コンポンロー郡タナオ・コミューン
※「コミューン」は集合村

事業の背景

収入を求めてベトナムへ

スバイリエン州コンポンロー郡タナオ・コミューンは、カンボジアの南東の端・ベトナムとの国境に隣接する貧しい農村地帯です。道路や電気などのインフラ整備も不十分で、これといった産業もなく、村に留まり農業だけで生計を立てるのは困難なことから、子どもを伴って隣国のベトナムに違法な出稼ぎに出ていく世帯があとをたちませんでした。
このように、この地域からベトナムへ違法入国・滞在をして拘束され、強制送還になる人口がとても多いことから、ここで事業を実施することにしました。

子どもたちの状況

幼い子どもが、物乞いで家族を支える

親が教育の重要性を理解していない現状や、子どもも一家の稼ぎ手であると考えられていることから、小学校高学年になると多くの子どもが学校を辞め、家事や農業を手伝ったり、都市部の工場や建設現場に出稼ぎに行きます。さらに深刻なのは、幼い子どもがベトナムで物乞いをさせられたり、物売りをさせられるというこの地域特有の問題でした。

このような子どもたちは、家族や友だちに囲まれて子どもらしく健やかに成長する機会や最低限の教育を受ける機会を失ったままおとなになります。十分な教育を受けていないことで、おとなになっても良い仕事に就けず、次世代の貧困の連鎖につながっています。

また、路上で物乞いや物売りをすることは、常に暴力や搾取の危険と隣り合わせで、人身売買に巻き込まれる可能性も非常に高いといえます。

詳しくはこちら
カンボジアだより「ベトナムで物乞いするカンボジアの子どもたち」

シーライツの取り組み

啓発活動

シーライツの職員が、学校を拠点として活動する児童・生徒の代表(以下「ピア・エデュケーター」)に対して子どもの権利、違法な出稼ぎ・児童労働・人身売買の危険について啓発活動を行いました。そして、ピア・エデュケーターは、学んだ知識を子どもから子どもへと伝え、活動を広めました。(この手法を「ピア・エデュケーション」といいます)

各村を拠点に活動する子どもたちのグループ(以下「子どもクラブ」)を結成し、地域の子どもたち同士が助け合い、安全で住みやすい地域をめざす活動を行いました。(写真は地域の清掃活動の様子)

保護者や地域住民、行政にも働きかけ、違法な出稼ぎの危険や教育の重要性を伝えました。

図書館・アクティビティルームの運営

(以下「子どもにやさしいスペース/チャイルド・フレンドリー・スペース」)
コミュニティ・センター内に図書室とアクティビティルームを設置し、子どもたちが自由に読書や学習したり、情報交換やグループ活動ができるよう、地域のおとなたちと連携して管理・運営しました。

現在学校に通えている子どもたちだけでなく、これまで学校に行かなかった子どもたちや学校をやめてしまった子どもたちの学習をサポートしました。

ネットワーキング

コンポンロー郡の『女性と子どものための郡委員会(District Committee for Woman and Children)』や教育局、タナオ・コミューンの農業活動や地域開発を担う目的で設立された農業組合と「子どもにやさしい地域づくり」をめざして連携しました。

シーライツの取り組み

ピア・エデュケーターが地域の子どものリーダーとして成長し、率先して地域の子ども(子どもクラブ)とのミーティングをファシリテートしたり、学校を中退し出稼ぎに出されてしまう子どもや親に働きかけるなど、シーライツの職員から学んだ知識を確実に行動に移せるようになりました。

上記に関連して、シーライツは、子どもたちが自分の権利を主張することができると感じる環境の形成に貢献しました。

チャイルド・フレンドリー・スペースが子どもたちの学びの場、交流の場として有効的に利用されています。

当該地域からベトナムへ物乞いに出される子どもの数が減少しました。

生計向上支援活動

実施期間:2012年4月~2014年3月

【目的】 違法な出稼ぎに頼ることない、安定した生計を確保する
農業技術指導とモニタリングを行う地域の農家の代表(以下「キーファーマー」)を選出・育成し、彼らを通じて、人身売買・児童労働の被害にあうリスクが高い子どもがいる貧困家庭や、今後、物乞い・出稼ぎに出るリスクの高い家庭の生計向上をめざしました。

【成果】
対象世帯に、化学肥料の使用を抑えた野菜の生産や有機肥料の生産を指導しました。
他の地域住民も巻き込み、住民同士の協力体制を構築しました。
特に優秀なキーファーマーがリーダー的な存在として地域をまとめ、住民が主体となって運営する組合を創設しました。(2014年1月)
地域住民の収入向上のため、また安全な食文化を広めるため、有機野菜や有機肥料の生産と販売をおこないました。

子どもの権利についての研修や人身売買・児童労働に関する子ども向けの啓発に必要な文房具を配布することができます。

童話や物語の本を5冊購入し、本が傷まないように補強してから図書室に届けることができます。

村の清掃と衛生について学ぶ「ゴミ拾いキャンペーン」を1回開催することができます。